yoasobi "あの夢をなぞって" 原作小説

夢の雫と夢の雫と星の花

yoasobiの第二弾も恋愛小説ですがバッドエンドではない?


 

プロローグ

 7月27日、音見川の花火大会。街を見下ろす風撫で丘。1発の大きな花火が光のカーテンのように目の前いっぱいに広がっている。隣を見れば君がいる。君が口を開いた。
「好きだよ」
 君の声がくぐもって聞こえた。まるで水の中にいるみたいだ。
 音のない世界で花火が花開き、君の声だけが聞こえた。
 私は君に告白される。それを知った瞬間だった。


 私はベッドの上で目を覚ました。こちらが現実だと確かめるように目をぱちぱちと瞬きする。徐々に白い天井がはっきりと見えるようになってきて、今のが予知夢だったのだと確信していった。
 私は子どもの頃から予知夢を見ることができた。双見家の女性はみな様々な形で未来を予知できるらしい。私は夢を見るという形で未来を予知することができた。未来を予知すると言っても、世界の危機とか壮大なものではなく、自分の身の回りの小さなことだけだった。明日の晩御飯が何とか、それくらいのこと。でも今回は男の子に告白されるという予知夢だ。16歳の私にとっては、世界の危機以上に大事なことに思えた。
 相手は一宮亮。私の幼馴染だった。私は彼のことが好きだ。でもそれを隠したくて、皆の前では少しきつく当たってしまっていた。そんな彼が私のことを好きだったなんて、今見た夢で初めて知った。いや、まだ私のことを好きになっていないのかもしれない。
 壁に掛けられたカレンダーを横になったまま見つめる。今日は7月13日。音見川の花火大会があるのは7月27日。
 再び仰向きになって目を閉じた。
「2週間後」独り言がこぼれた。
 この2週間の間に彼は私のことを好きになるのかもしれない。そう考えていて、顔が熱くなった。
(第1章に続く)

 

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