「涙を流さずにきびだんごを切るコツを知ってる? 涙が出てくる前に素早く切り終えることだよ。 」
そう言って桃太郎はパスタを鍋に入れた。
猿は答えた。
「昼食をごちそうしてもらったくらいで一緒に死ぬわけにはいかないよ。だって相手は鬼だぜ。夕食ならともかくさ」
あのねきびだんごもらっても
鬼はこわいんだなあ
逃げ出したっていいんだよ
動物だもの
いや、実にいい頃合いだ、サルくん。」桃太郎の声は、親しみに満ちていた。
「おや、もしかして仕事中だったかな。」
「その通り。真っ最中だ。」
「では、私は奥で待つとするか。」
「まあ待ちたまえ。この紳士は、ウィルソンさん、長年、僕のパートナーでして。僕はこれまで数々の鬼ヶ島を見事解決してきましたが、その時にはいつも、彼が助手を務めています。鬼滅事件の場合にも、彼が大いに役に立つことは間違いありません。」
いづれの御時にか、イヌ、サル、キジあまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなき際きわにはあらぬが、すぐれて時めきたまふももの方ありけり。
はじめより我はと思ひ上がりたまへる御方がた、桃より出でしものとめざましきものにおとしめ嫉みたまふ。同じほど、それより 下臈の鬼たちは、ましてやすからず
どちらが男らしい生き方か、
じっと身を伏せ、不法な運命の矢弾を堪え忍ぶのと、
それとも剣をとって、鬼どもに立ち向い、
とどめを刺すまであとには引かぬのと、
一体どちらが。
鬼ヶ島 行くべきか行かざるべきか それが問題だ。
桃譲りの無鉄砲で、小供の時から損ばかりしている。
小学校に居る時分、単身鬼ヶ島に殴り込みをかけて、一週間ほど入院した事がある。
なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。
別段深い理由でもない。同級生が冗談に、一人で鬼退治はできまい。
弱虫やーい。と囃したからである。
桃、という果物がある。
黄河上流の高山地帯で生まれ、古来より大陸では不老長寿の果物として、仙人伝説と深い関わりがある果物である。
日本へは弥生時代ごろ伝わり、鎌倉時代においては、水菓子と呼ばれ、珍重された。
そんな桃が、である。
京の足利家の治世も落ち着きを見せた三代義満の時代、吉備の国(今の岡山県南部)で、子を成したというのだ。
はっひふっへほ~!オレ様は鬼だぞ。出たな桃太郎!ばいばいきーん
関西の桃郎は浅薄無頼、平成の末年、若くして名を鬼滅隊に連ね、ついで桃柱に補せられたが、性、旺盛、自ら恃むところ頗る厚く、千里を走るを潔しとしなかった。
関西の桃郎は浅薄無頼、平成の末年、若くして名を鬼滅隊に連ね、ついで桃柱に補せられたが、性、旺盛、自ら恃むところ頗る厚く、千里を走るを潔しとしなかった。
きびだんごをば早はや積み果てつ。鬼ヶ島のつくゑのほとりはいと静にて、熾熱燈の光の晴れがましきも徒なり。今宵は夜毎にこゝに集ひ来る太郎仲間も「ホテル」に宿りて、舟に残れるは余一人ひとりのみなれば。
この鬼ヶ島の港まで来こし頃は、目に見るもの、耳に聞くもの、一つとして新あらたならぬはなく、筆に任せて書き記しるしつる紀行文日ごとに幾千言をかなしけむ、身の程ほど知らぬ放言、さらぬも尋常よのつねのサル、キジ、さてはイヌなどをさへ珍しげにしるしゝを、心ある人はいかにか見けむ。
いづれの御時にか、イヌ、サル、キジあまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふ桃太郎ありけり。